老犬の流動食をシリンジで与える手順|強制給餌の量の目安と誤嚥対策

自分で食べられなくなった老犬に、シリンジで流動食を与える場面があります。ただ、入れる位置や1回の量を誤ると、むせや誤嚥につながることがあります。

この記事では、動物病院が案内している手順をもとに、準備するものから量の決め方、誤嚥を防ぐための確認点までを順にまとめました。

ご注意ください 強制給餌は、体力や嚥下の状態によっては負担が大きく、適さない場合があります。与える量・回数・流動食の濃度・続ける期間は、必ずかかりつけの獣医師の指示に従ってください。この記事は自己判断で行うことを勧めるものではありません。

この記事でわかること
  • シリンジを差し込む位置と、飲み込みを確認しながら進める手順
  • 1日量と1回量の考え方、1回にかける時間の目安
  • むせた時の対応と、誤嚥性肺炎を疑うサイン
目次

強制給餌を始める前に確認したいこと

まず確認したいのは、食べられない理由です。口の中の痛みや吐き気が背景にある場合、原因を残したまま口から入れても嘔吐につながることがあります。

飲み込む力そのものが落ちている場合も注意が必要です。名古屋みなみ動物病院・どうぶつ呼吸器クリニックは、喉頭麻痺などの喉頭疾患、巨大食道症などの食道疾患、寝たきりの状態などが、誤嚥性肺炎を生じやすい基礎疾患・状況として挙げられると解説しています。こうした背景がある犬では、口からの強制給餌が適さないこともあります。

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用意するもの

動物メディカルセンターは、強制給餌の準備物としてカテーテルチップやシリンジ(フードが通りやすいよう先端が太くなっているもの)、口周りを拭くタオル、嫌がる場合のエリザベスカラーやバスタオルを挙げています。一般的な注射器タイプのシリンジは先端が細く、粘度のある流動食では詰まりやすくなります。

フードは流動食や缶詰などの飲み込みやすいものが基本で、ドライフードを使う場合は芯が残らないようにしっかりふやかすことでシリンジを通せるようになります。粉末タイプの製品を溶かす場合、森乳サンワールドは40℃前後の微温湯を使い、60℃以上の温湯は栄養成分が失われる原因になるため避けるよう案内しています。溶け残りは詰まりの原因になるため、十分に溶かしてから使用します。

なめらかさが足りない場合は、日頃の食事をペースト状にしやすい形に変えておくと、シリンジでの給餌に移行しやすくなります。

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ShareZまごころごはんは総合栄養食ではなく一般食のため、主食として単独で与えるのではなく、総合栄養食と組み合わせて使用します。対象は1歳以上の成犬です。

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シリンジで与える手順

1. 上半身を起こした姿勢をつくる

みなとおおほり動物病院は、寝たままだと誤嚥したり食べ物が反対側に流れたりすることがあるため、上半身を起こして体をまっすぐ正面に向けること、お座りが難しい犬は伏せの状態から倒れないよう支えることを勧めています。

2. 犬歯より後ろから差し込む

日本動物医療センターは、シリンジで液体を与える際、正面から入れると口の脇からこぼれやすいため、犬歯より後ろ側の口の脇から少量ずつ入れる方法を紹介しています。同院は、一度に入れすぎると誤嚥の危険があるため、あせらず少量ずつ与える必要があるとしています。

3. 飲み込みを確認してから次を入れる

一口ごとに、口を動かして飲み込む様子を確認します。口の中に残ったまま次を注入すると、こぼれるだけでなく気道へ流れ込むリスクが高まります。飲み込みが遅い日は、間隔を長めにとります。

4. 1回の給餌は短時間で切り上げる

動物メディカルセンターは、1回の時間は長くても15分以内に終えること、嫌がって時間がかかる場合は短時間を頻回にすることを勧めています。長時間続けると犬が疲れてしまうためです。

5. 口周りを拭き、しばらく姿勢を保つ

終わったら口の周りを拭き取ります。姿勢はすぐに崩さず、少しの間そのままにしておくと安心です。

寝たきりに近い状態では、給餌時以外の姿勢づくりも合わせて見直すと負担が減ります。

▶関連記事: 犬が寝たきりの時の楽な姿勢と寝かせ方|体位変換で負担を減らすコツ

強制給餌の量の目安

1日量は必要カロリーから逆算する

1日に与える総量は、必要なエネルギー量を製品のカロリー密度で割ると計算できます。栃木県動物愛護指導センターは、安静時エネルギー要求量(RER)を「体重(kg)の0.75乗×70」で求め、状態に応じた係数をかけて1日のエネルギー要求量(DER)を算出する方法を紹介しています。体重3kgでRERは約160kcal、5kgで約230kcal、10kgで約395kcalが目安です。

療養中にどの係数を用いるかは状態によって異なります。実際の目標量は獣医師に確認し、製品パッケージの体重別給与量表と照らし合わせて決めるのが現実的です。

1回量は少量から始めて増やす

動物メディカルセンターは、はじめは少量からスタートし、食べられそうなら少しずつ増やすことを勧めています。最初から一度に多く入れると、苦しくなって嘔吐することがあるためです。

1日量を1回で入れきる必要はありません。1回に飲み込める量が少ない犬では、回数を増やして総量を確保する形になります。週単位での体重の推移を記録しておくと、量が足りているかどうかの判断材料になります。

誤嚥を防ぐための注意点

むせたら中止する

さだひろ動物病院は、自宅でのチューブ給餌の手順として、給餌前に少量の水でむせないかを確認し、咳き込む場合は給餌を中止して来院するよう案内しています。シリンジでの給餌でも考え方は同じで、むせや咳き込みが出たらその場で中断します。

誤嚥性肺炎を疑うサイン

名古屋みなみ動物病院・どうぶつ呼吸器クリニックによると、犬の誤嚥性肺炎では急性の呼吸困難が42〜55%、咳が57%、発熱が31%の割合で認められると報告されています。給餌のあとに咳が続く、呼吸が速い、ぐったりしているといった変化があれば、早めに動物病院へ連絡してください。

つだ動物病院は、シニア犬では加齢に伴って嚥下反射が低下するとしたうえで、食事時間が長くなっていないか、飲み込みが遅くなったり咳が増えたりしていないか、食後に呼吸が荒くなる変化がないかを日常の確認点として挙げています。

シリンジがうまくいかない場合の選択肢

シリンジを強く嫌がる犬には、指に少量のフードをのせて上顎になすりつける方法もあります。自分で舐め取れる状態であれば、こちらのほうが負担が小さいこともあります。

それでも必要量を確保できない場合、チューブによる給餌が検討されます。半田なのはな動物病院は、簡易的に設置できるが抜けやすい経鼻食道チューブは短期的な使用に、麻酔をかけて設置する食道瘻・胃瘻チューブは嘔吐に強く長期的な使用に選択されると説明しています。

さだひろ動物病院は、食道チューブでの自宅給餌について、誤嚥のチェック・給餌・チューブ内のフラッシュという順で進め、流動食は1回15〜30mLを目安に数時間ごと、嘔吐する場合は間隔を空けるか1回量を減らして調整すると案内しています。口から入れるより負担が少なく済むケースもあるため、選択肢として獣医師に相談しておくとよいでしょう。

まとめ

シリンジでの流動食は、上半身を起こし、犬歯より後ろから少量ずつ入れ、飲み込みを確認してから次に進むのが基本の流れです。1回は15分以内を目安に切り上げ、量は少量から始めて様子を見ながら増やしていきます。

1日の総量は必要カロリーから逆算できますが、実際にどこまで入れるかは体力や嚥下の状態によって変わります。むせや咳き込みが出た時点で中断し、給餌後の呼吸や咳の変化を記録して、かかりつけの獣医師と共有しながら進めてください。

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