老犬がぐるぐる回る左回り・右回りの原因|認知症と脳疾患の見分け方

いつも同じ方向にばかり回っている。左回りだと脳の病気で、右回りなら大丈夫といった話も見かけますが、方向そのものから病名を絞り込むことはできません。この記事では、回る方向が何を示すのか、そして認知症と脳の病気をどこで見分けるのかを、獣医療で使われている観察のポイントに沿って整理しました。

この記事でわかること
  • 「一方向に回る=脳の病気」とは限らない理由
  • 回る方向より重視される、頭の傾きや目の動きの見方
  • 認知症と脳疾患を分ける観察ポイントと、検査で分かること

※斜頸や眼振、けいれんを伴う旋回は緊急性が高い場合があります。当てはまる場合は様子を見ずに動物病院へご相談ください。

目次

「一方向に回る=脳の病気」とは限らない

まず前提を整理しておきます。認知症でも、一定の方向にだけ回ることがあります。

壱岐動物病院が公開している犬認知症診断基準100点法の評価表では、歩行状態の項目に一定方向にのみふらふら歩き、旋回運動(大円運動)になるという段階が含まれています。認知症の評価スケールの中に、方向が一定という記述が明記されているわけです。

一方で、ほさか動物病院は犬の脳腫瘍で見られる症状として歩行がふらつく、同じ方向に回る、けいれんや発作を起こす、目の動きがおかしい、頭を傾けるといった項目を挙げています。

つまり、認知症でも脳腫瘍でも「同じ方向に回る」は起こりえます。左右どちらに回っているかという情報だけでは、両者を分けられません。

回る方向が手がかりになる場面

では方向に意味がないかというと、そうではありません。特に前庭疾患では、症状の左右差が障害されている側を示す手がかりになります。

前庭疾患は、アニコム損保の疾患解説によれば内耳やそこにつながる前庭神経が障害される末梢性、小脳や延髄にある前庭系の中枢に障害が起こる中枢性、検査でも原因を特定できない特発性に分けられます。同解説は、斜頸について末梢性前庭疾患の場合は障害がある方の耳が下に向くと説明しています。

ふなばし動物医療センター かつまペットクリニックも、捻転斜頸について障害のある方の耳が地面方向に下向きになるとしています。

めぐり動物病院は、末梢性の前庭障害についてより詳しく、中耳病変では病変と同側の頭部の傾きが起こり、内耳疾患では同側の斜頸に加えて転倒、回転、旋回、眼振、位置性斜視、非対称性運動失調などが現れると解説しています。同院はまた、中耳または内耳の病気に伴って、同じ側の目にホルネル症候群(縮瞳、眼瞼下垂、眼球後退)が現れることがあるとしています。

家庭で見るべきは、回る方向そのものより「頭がどちらに傾いているか」「目がどう動いているか」「左右の目に違いがないか」です。この情報は診察でそのまま役立ちます。

認知症による旋回の見え方

認知症が原因の場合、旋回は突然完成形で現れるのではなく、段階を追って変化します。100点法の歩行状態の項目は、ふらつきながらの不正運動 → 一定方向の大円運動 → 小円運動 → 自分中心の旋回という順で重症度が上がる構成になっています。

同時に、他の項目も動いていきます。生活リズム、鳴き声、排泄、感情表出といった評価項目が一緒に変化しているなら、認知症の可能性が高まります。逆に、歩き方だけが急に変わった場合は別の原因を考える必要があります。

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脳疾患を疑うサイン

岐阜大学動物病院神経科は、脳腫瘍の最も多い症状は痙攣であり、中高齢の動物で痙攣が繰り返し起きる場合は脳腫瘍の可能性があると説明しています。その他の症状は腫瘍が発生した部位によって大きく異なり、視力障害、歩行障害、性格の変化、意識状態の低下などさまざまだとしています。

診断について同科は、血液検査やレントゲン検査では脳腫瘍は診断できず、身体検査や神経学的検査で脳の疾患が強く疑われた場合にCTやMRIによる精密検査が必要になると述べています。

ほさか動物病院は、初期は軽い症状だけでも、腫瘍の成長により短期間で悪化することがあると注意を促しています。進行の速さは、認知症との区別において重要な情報です。

見分けるための観察ポイント

見るところ認知症で多い脳疾患・前庭疾患で多い
始まり方数か月かけて徐々に数日〜数週間で明確に変化
頭の傾き基本的にない一方に傾く(前庭疾患では障害側)
目の動き変化なし眼振、斜視、左右で違う
けいれんまれ繰り返すことがある
他の変化夜鳴き、排泄、反応の低下も同時進行歩行や意識の変化が中心

動画を撮っておく

ほさか動物病院は、家庭での早期発見のために歩き方や性格の変化を観察し、動画を撮影することを勧めています。旋回は診察室では出ないことも多いため、自宅での様子を記録しておくと診断の助けになります。留守中や夜間の様子を確認する手段があると、記録の精度が上がります。

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受診の目安

次のいずれかがあれば、認知症と決めつけずに動物病院へ連絡してください。

  • 数日のうちに旋回が始まった、または急に悪化した
  • 頭が一方に傾いている、目が細かく揺れている
  • 左右の目の見え方や瞳の大きさが違う
  • けいれんを起こした、意識がぼんやりしている時間がある
  • 耳の病気を繰り返してきた経過がある

まとめ

左回りか右回りかという情報だけでは、認知症と脳疾患を区別できません。認知症の評価スケールにも一定方向の旋回が段階として含まれており、脳腫瘍でも同じ方向に回る症状が現れるためです。

分かれ目になるのは、発症の速さ、頭の傾きや眼振の有無、けいれんの有無、そして他の変化が同時に進んでいるかどうかです。方向を記録することには意味がありますが、それは病名を当てるためではなく、診察で必要な情報を揃えるためだと考えてください。

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