フードには口をつけないのに、水はしっかり飲んでいる。元気がないわけでもない日があるから、余計に判断がつかない——高齢犬の介護でよくある状況です。「水を飲めているなら大丈夫」と考えたくなりますが、水分と栄養はまったく別の問題です。
この記事では、水は飲むのに食べない状態が何を示しているのか、原因の候補と受診の目安、そして家庭でできる栄養補給の工夫を整理します。
〈ご注意ください〉食欲の低下は、腎臓や肝臓の病気など重い疾患のサインであることがあります。また、余命は原因や進行度によってまったく異なり、症状だけで判断できるものではありません。この記事は家庭で状況を整理するための目安であり、診断や予後の判定に代わるものではありません。食べない状態が続く場合は、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。
- 「水は飲むのに食べない」という状態が示す可能性と、そこから絞り込める原因
- 何日まで様子を見てよいのか、すぐ受診すべきなのかの判断基準
- 家庭でできる栄養補給の工夫と、絶対にやってはいけない対応
「水は飲むが食べない」が示していること

この状態には、2つの意味があります。
脱水は避けられているが、栄養は入っていない
水を飲めているぶん、脱水の進行は緩やかです。しかし体を維持するためのエネルギーとたんぱく質は入っていません。高齢犬は筋肉量の余力が少ないため、食べない期間が続くと体力の低下が若い犬より早く進みます。
「水をよく飲む」こと自体が症状の可能性がある
飲水量が以前より明らかに増えている場合、それは喉が渇いているのではなく、病気による多飲かもしれません。ユニ・チャームの解説によれば、老犬に多い慢性腎臓病では、体重の減少、飲水量・尿量の増加、排泄の失敗の増加が起きるとされています。
つまり「食べないけど水は飲むから安心」ではなく、食べないことと水をよく飲むことがセットで一つのサインになっている可能性があります。1日の飲水量とおしっこの量・回数も、あわせて確認してください。
考えられる主な原因
口の中の痛み
高齢犬で見落とされやすいのが、歯周病などによる口の痛みです。オダガワ動物病院の解説では、口の中の問題を見分けるサインとして、ごはんを口に入れるが食べない、片側だけで噛む、硬いものを避けるようになる、食事中に突然キャンと鳴く、といった行動が挙げられています。
水は痛みなく飲めるため、「水は飲むのに食べない」という状態と非常に相性のよい原因です。まずここを疑ってください。
腎臓の病気
オダガワ動物病院の解説によれば、腎不全は高齢犬に多く、腎臓の機能が低下すると体内に老廃物が蓄積し、食欲不振、嘔吐、多飲多尿、体重減少などが起こるとされています。尿の色が薄い、量が増えた、口臭が尿のような臭いになるといったサインに注意が必要とされています。
肝臓の病気
同解説では、肝臓は解毒や栄養の代謝を担う臓器で、機能が低下すると食欲不振、嘔吐、下痢、黄疸(白目や歯ぐきが黄色くなる)、腹水などが現れるとされています。初期症状が乏しく、気づいた時には進行していることも多いと指摘されています。
加齢による変化
つるまき動物病院の解説では、加齢により運動量が減るとエネルギーの必要量も減るため食欲が低下しやすいこと、消化機能の低下や嗅覚・味覚の鈍りも食欲低下を招くことが挙げられています。
嗅覚の低下は特に重要です。犬は匂いで食べ物を認識するため、匂いが弱いと「そこに食べ物がある」と認識しづらくなります。後述する温めの工夫が効くのは、この理由によります。
薬の副作用・その他
つるまき動物病院の解説では、服用中の薬の副作用として消化器や代謝に影響が出て食欲が低下する場合があること、ストレスや環境の変化、分離不安などの心理的要因でも食欲不振が起こることが挙げられています。心理的要因による食欲不振では下痢の併発が多いとされています。
ユニ・チャームの解説では、このほか老齢性白内障などによる視力低下で食事を探せなくなるケース、甲状腺機能低下症やクッシング症候群などのホルモンの病気も挙げられています。
何日まで様子を見てよいのか
つるまき動物病院の解説では、食欲不振を「普段よりも食事の摂取量が減少している状態」とし、いつも完食しているフードを7〜8割以下しか食べない状態が該当するとしています。
高齢犬の場合、判断のラインは若い犬より手前に置いてください。 体力の余力が少なく、数日の絶食でも回復に時間がかかります。目安としては次のとおりです。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 1食抜いたが、次の食事は食べた | 経過を見ながら記録する |
| まる1日ほとんど食べていない | 動物病院に電話で相談する |
| 2日以上ほとんど食べていない | 受診する |
| 嘔吐・下痢・ぐったりを伴う | 日数に関係なくすぐ連絡する |
| 黄疸(白目や歯ぐきが黄色い)がある | すぐ連絡する |
食欲低下の背景と食事の工夫については、次の記事でも整理しています。
▶関連記事: 老犬がご飯を食べないわがまま時に見直す食事の工夫と注意点
口を開けようとしない、口に入れるが食べない場合は、口腔内の問題を優先して確認してください。
▶関連記事: 老犬がご飯食べないで口を開けない時の原因と対処法
余命について、正直なところ

「食べなくなったら余命は短い」と語られることがありますが、食べない状態が何日続いたかで余命を推し量ることはできません。 理由は単純で、原因がまったく違うからです。
- 歯周病の痛みが原因なら、治療で食欲が戻ることがある
- 薬の副作用なら、変更で改善することがある
- 慢性腎臓病なら、進行の段階によって見通しが大きく変わる
- 終末期の衰弱による食欲低下は、また別の話になる
つまり「食べない」という症状は入口でしかなく、その先の見通しは検査で原因が分かって初めて意味を持ちます。ネット上の日数の目安を自分の犬に当てはめる前に、まず何が起きているのかを確定させることが、結果的に一番早い道になります。
すでに終末期の診断を受けている場合は、無理に食べさせることよりも、本人が苦しくない状態を保つことが優先になります。どこまで介入するかは獣医師と相談しながら決めてください。
やってはいけない2つのこと
人間用の薬を与える
オダガワ動物病院の解説では、最も危険なのは人間用の薬を与えることだとされています。人には安全な薬でも犬には毒となるものが多く、特に解熱鎮痛剤や胃腸薬の中には肝臓や腎臓に深刻なダメージを与えるものがあり、自己判断での投薬は避けるべきとされています。
無理に食べさせる
同解説では、口をこじ開けて食べ物を押し込む、鼻をつまんで飲み込ませるといった行為は誤嚥を引き起こし、気管に食べ物が入って呼吸困難や肺炎を起こす危険があるとされています。
強制給餌が必要な状況もありますが、それは獣医師の指示のもとで、正しい姿勢と角度で行うものです。焦って自己流で始めないでください。
家庭でできる栄養補給の工夫
原因の特定と並行して、食べやすくする工夫は試せます。
温めて香りを立たせる
人肌程度に温めるだけで匂いが立ち、嗅覚が落ちた犬でも認識しやすくなります。加熱しすぎは火傷の原因になるため、必ず温度を確認してください。
ふやかす、やわらかくする
口の痛みや顎の力の低下がある場合、硬いフードは負担になります。ぬるま湯でふやかす、ウェットタイプに切り替えるなどで食べやすくなります。
食器の高さを上げる
首を下げる姿勢が負担になっている場合があります。台に載せて胸の高さに近づけると、食べやすくなることがあります。
少量を回数多く
一度に多い量を見ると食べる気を失うことがあります。1回量を減らして回数を増やすほうが、総量として入ることがあります。
香りの強いものを少量トッピングする
食欲のきっかけをつくる目的で、香りの立つスープやトッピングを使う方法があります。ふやかす際の水分としてスープを使うと、香りと水分を同時に補えます。
嗜好性を高めるトッピングやスープは種類が多く、原材料や与える量も製品によって異なります。持病がある場合は、成分が治療方針と合うか獣医師に確認してから使ってください。

愛犬のボーンブロススープ
「Belii.(ベリー)」
食欲が落ちているときや、いつものごはんを残してしまうときは、無理なく水分や栄養を摂れるものを取り入れたいところです。
Belii.は、鶏骨をじっくり長時間煮込んで作られた、愛犬・愛猫用のボーンブロススープです。
そのまま与えるほか、フードにかけたり、水で薄めたりして与えられます。
- 鶏骨を長時間煮込んだボーンブロススープ
- コラーゲン・ゼラチン・カルシウム・アミノ酸などを含む
- 増粘剤・増粘多糖類・調味料などの添加物を不使用
- そのままでも、ごはんにかけても与えられる
- 1袋30mlの個包装で、必要な量を調整しやすい
- 定期便の数量・配送サイクルの変更、休止・解約に対応
食欲が落ちている愛犬や、
いつもの食事と一緒に水分を摂らせたい場合に取り入れやすいスープです。
詳しい原材料や与え方は、公式販売ページで確認できます。
\ いつものごはんに手軽にプラス /
腎臓病の療法食を食べてくれない場合
すでに腎臓病の診断を受けていて療法食に切り替えた場合、味や食感の変化で食べなくなることがあります。療法食は治療の一部であるため、自己判断で普通食に戻すのは避け、まず獣医師に相談してください。食べない状態が続いていること自体が、進行や体調の変化を示している可能性もあります。
▶関連記事: 犬に消化器サポートフードは必要?選び方と確認したい成分を解説
まとめ
- 「水は飲むが食べない」は、脱水は避けられていても栄養が入っていない状態
- 飲水量が増えているなら、それ自体が腎臓病などのサインである可能性がある
- 水は痛みなく飲めるため、口の中の痛みは最も相性のよい原因。まずここを疑う
- 高齢犬は余力が少ない。まる1日食べていなければ電話相談、2日以上なら受診が目安
- 食べない日数から余命は判断できない。原因を確定させることが結果的に一番早い
- 人間用の薬を与えること、無理に口へ押し込むことは避ける
- 温める、ふやかす、食器の高さを上げる、少量を回数多く、が家庭でできる基本の工夫
「水は飲んでいるから」と待つ時間が、高齢犬にとっては長すぎることがあります。今日の飲水量と食べた量を記録して、明日も同じなら電話をする——それくらいの区切りで動くのが、結果的に負担の少ない選択になります。
出典一覧

