散歩にも行っていないのに、ハァハァという荒い呼吸が止まらない。エアコンの効いた部屋にいるのに、以前より息づかいが激しい気がする。犬にとってパンティングは体温を下げるための正常な行動ですが、安静時に続く場合は体からのサインであることがあります。この記事では、老犬の息が荒くなる原因を7つに整理し、様子を見てよい場合と受診すべき場合の境界線を示します。
ご注意ください 息の荒さは、熱中症や心臓の病気など、時間の経過が予後を左右する状態のサインであることがあります。この記事は家庭で状況を整理するための目安であり、診断に代わるものではありません。判断に迷う場合は、必ずかかりつけの動物病院にご相談ください。
- 正常なパンティングと、注意が必要な荒い呼吸を見分ける具体的な基準
- 老犬の息が荒くなる7つの原因と、それぞれに伴いやすい症状
- 応急処置が必要な状況と、すぐに動物病院へ連絡すべきサイン
正常なパンティングと「注意が必要な荒い呼吸」の違い

犬は人のように全身で汗をかいて体温を下げることができません。池田動物病院の解説によれば、犬はパンティング(ハァハァする呼吸)によって熱を逃がしており、これ自体は正常な体温調節の仕組みです。
問題になるのは、その必要がない状況で息が荒い場合です。次の条件に当てはまるものが多いほど、生理的な範囲を超えている可能性が高くなります。
- 涼しい室内で、安静にしているのに続いている
- 運動や興奮のきっかけがない、または収まるまでの時間が以前より長い
- 眠っている時にも呼吸が速い、または荒い
- 呼吸のたびにお腹が大きく動く(努力性呼吸)
- 舌や歯ぐきの色がいつもと違う
判断の軸になるのが呼吸数です。日本動物医療センターの解説によれば、犬の正常な呼吸回数は毎分10〜35回程度とされています。胸の上下を10秒間数えて6倍すれば、その場で確認できます。
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老犬の息が荒くなる7つの原因
1. 暑さ・熱中症
最も緊急性が高く、季節を問わず起こり得るのが熱中症です。池田動物病院の解説では、気温や湿度が高い環境では体温を十分に下げられず、体に熱がこもることで熱中症が起こると説明されています。近年は室内で発症するケースもあるとされ、高齢犬は特にリスクが高い層にあたります。
荒い呼吸に加えて、ぐったりしている、よだれが多い、体が明らかに熱い、嘔吐や下痢がある場合は熱中症を疑ってください。
2. 興奮・ストレス・不安
来客、雷や花火、通院、環境の変化などで一時的に呼吸が荒くなることがあります。高齢犬では認知機能の低下により、以前は平気だった刺激に強く反応するようになることもあります。
刺激が去った後、10〜15分ほどで落ち着くかどうかがひとつの目安です。刺激がないのに続く場合は別の原因を考えます。
3. 痛み
関節炎、椎間板の異常、腹部の不調など、痛みがあると呼吸が浅く速くなります。老犬では「じっとしている=落ち着いている」とは限りません。動きたがらない、抱き上げると嫌がる、姿勢が不自然といった変化を伴う場合は、痛みの可能性を考えます。
4. 心臓の病気
高齢の小型犬に多い僧帽弁閉鎖不全症では、進行に伴って心臓のポンプ機能が低下し、酸素を補おうとして呼吸が速く荒くなります。ぬのかわ犬猫病院の解説によれば、初期には「元気がない」「疲れやすい」「寝ている時間が多い」といった変化が現れますが、加齢によるものと受け取られやすく気づかれにくいとされています。
さらに進行して肺に水が溜まる肺水腫を起こすと、苦しそうな呼吸やふらつき、突然倒れるなど、救急対応が必要な状態になります。
5. 呼吸器の病気
日本動物医療センターの解説では、呼吸が速くなる背景として、鼻炎、軟口蓋過長症、気管や気管支の炎症、肺炎、胸水などが挙げられています。特に肺炎は重症化が早く、早めの対応が必要な緊急疾患とされています。
咳を伴う場合は、原因の絞り込み方が変わります。
▶関連記事: 犬を酸素室に入れるタイミングの考え方と使用前の注意点を解説
6. ホルモンの病気(クッシング症候群)
副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)でも、症状のひとつとしてパンティングが現れます。野並どうぶつ病院の解説によれば、多飲多尿、多食、腹部膨満、左右対称の脱毛、皮膚の菲薄化、パンティング、足腰が弱り歩きたがらないといった症状が起こり、特に8歳以上の中高齢犬がかかりやすい病気とされています。
同院では、高齢犬でよくみられる症状であるため、病気と気づかずに見過ごしてしまう飼い主が多いことも指摘されています。「よく水を飲むようになった」「お腹が出てきた」という変化が同時にあるなら、この可能性を獣医師に伝えてください。
7. 発熱・貧血など全身の状態
感染症や炎症による発熱、貧血による酸素不足でも呼吸は速くなります。歯ぐきや舌が白っぽい場合は貧血の可能性があります。これらは家庭で判断できないため、他の原因に当てはまらない時ほど検査での確認が必要になります。
すぐに動物病院へ連絡すべきサイン

日本動物医療センターの解説では、次のような状態を「呼吸が苦しい」サインとして挙げています。
- 上を向いて呼吸している
- 深い呼吸をしている(お腹や胸がいつもより大きく動く)
- 伏せることができない、眠れない
- 咳が続いている
- 舌の色が白い、または青い
舌や歯ぐきが青白い状態はチアノーゼと呼ばれ、体に酸素が行き渡っていない可能性を示します。これらが見られた場合は、夜間であっても救急対応をしている動物病院に連絡してください。
熱中症が疑われる場合の応急処置について、池田動物病院では、応急処置をして元気になったように見えても動物病院を受診すること、意識がない、ぐったりしている場合は近隣の動物病院に連絡し、体を冷やしながら向かうことが案内されています。
体温を家庭で測れると、熱中症や発熱の判断材料になります。
▶関連記事: 犬の体温・熱の測り方は人間用体温計でOK?正しい計り方と平熱の目安
家庭でできる環境の調整と記録
環境を整える
室温と湿度を下げ、風通しを確保します。犬は床に近い位置で過ごすため、人が感じる室温より高い環境にいることを前提に調整してください。首輪が気道を圧迫することもあるため、呼吸が荒い時はハーネスに切り替えるか、一時的に外すことも検討します。
記録を残す
診察室では緊張で呼吸が変わるため、自宅での様子を残しておくと診断の助けになります。
- 安静時・睡眠時の呼吸数(日付と時刻つき)
- 荒い呼吸をしている様子の動画(10〜20秒程度)
- 1日あたりの飲水量(クッシング症候群が疑われる場合は特に有用)
- いつから、どんな場面で荒くなるか
自宅での酸素ケアについて
心臓や呼吸器の病気で在宅ケアを続ける場合、獣医師から自宅での酸素環境を提案されることがあります。アニコム損害保険の疾患情報によれば、気管虚脱でチアノーゼや重度の呼吸困難が見られる場合には、酸素吸入が行われることがあるとされています。
ただし、ペット用の酸素室は病気そのものを治す装置ではありません。呼吸しやすい環境を整えて負担を軽くする、補助的な手段です。導入するかどうか、いつから使うかは、必ずかかりつけの獣医師の判断に従ってください。
自宅用の酸素室には購入のほかにレンタルという形もあり、会社によって月額の料金体系や解約条件、付属する機器の構成が異なります。実際の費用とセット内容は、公式サイトで最新の情報をご確認ください。

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まとめ
- パンティング自体は正常な体温調節。問題は「その必要がない状況で続くこと」
- 犬の正常な呼吸数は毎分10〜35回程度が目安。10秒数えて6倍すればその場で確認できる
- 原因は暑さ・熱中症、興奮やストレス、痛み、心臓の病気、呼吸器の病気、クッシング症候群、発熱や貧血など幅広い
- 多飲多尿や腹部膨満、脱毛を伴う場合はホルモンの病気が背景にあることがある
- 上を向いて呼吸する、お腹を大きく使う、伏せられない、舌が白い・青いといった様子は緊急性が高い
老犬の荒い呼吸は「歳だから疲れやすいのだろう」で流されがちです。しかし涼しい部屋で安静にしているのに続くパンティングは、体が何かを補おうとしているサインかもしれません。まずは今の呼吸数を10秒数えて、その数字を記録するところから始めてみてください。
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