夜中に突然、これまで聞いたことのない大きな声で鳴き出す。高齢の猫でこの変化が現れると、多くの人が認知症を思い浮かべます。
ただ、叫ぶような鳴き方には、検査で確認でき、治療によって落ち着く可能性のある病気が隠れていることもあります。この記事では、代表的な原因を挙げたうえで、見分け方と自宅での対策を整理しました。
- 高齢猫が大きな声で鳴くときに考えられる4つの背景
- 認知症と病気を切り分けるための観察ポイント
- 自宅でできる環境の整え方と、受診の目安
※体重の減少や飲水量の変化を伴う場合は、早めにかかりつけの動物病院にご相談ください。
まず確認したい:甲状腺機能亢進症

高齢猫が大声で鳴くようになったとき、最初に候補に挙がるのがこの病気です。
ナガワ動物病院は、甲状腺機能亢進症でよくみられる症状として食欲の増加や体重減少(特に筋肉量の低下)、いわゆる「よく食べるのに痩せる」状態、多飲多尿、攻撃的になる、よく鳴くといった変化を挙げています。同院は中高齢の猫で一般的な病気だとしたうえで、心拍数が激増することから肥大型心筋症や高血圧症が認められることがあるとも述べています。
見逃されやすいのは、初期に「元気そう」に見える点です。うたづ動物病院は、細胞の代謝活性全般が活発になりすぎることで「高齢の割に食欲もあり元気」という印象を持ってしまうこともあり、症状が進行すると最終的には食べる元気もなくなり食欲も低下していくと説明しています。
診断と治療
うたづ動物病院によれば、診断は主に血液検査、触診、超音波検査で行われ、甲状腺ホルモン(T4)の数値が高ければ確定できます。ナガワ動物病院は、甲状腺機能亢進症の猫では90〜95%でtT4値が上昇することが知られており、診断上重要な指標になるとしています。
治療について、ノヤ動物病院はチアマゾールを含む飲み薬による内科治療がもっとも一般的で、甲状腺ホルモンの材料となるヨウ素を制限した療法食を用いる方法もあると説明しています。同院は、投薬開始後は定期的な血液検査でT4の値を確認しながら薬の量を調整していく必要があるとしています。
つまり、確認する手段があり、対応する方法もある病気です。「年のせい」で止めてしまうと、この選択肢を逃すことになります。
耳が聞こえにくくなっている場合
叫ぶような鳴き方に直接つながる要因として、聴力の低下があります。
ヒルズは、猫も高齢になると耳が遠くなり、聞こえにくくなると自分の声のボリュームがわからず、その場に合わない大きな声で繰り返し鳴いたりすることがあると説明しています。同社はまた、環境内の聴覚的な手がかりを認知しにくくなることで見当識障害を起こしやすくなり、耳の聞こえにくさが認知機能不全の一因となることがあるとしています。
視覚についても、高齢猫では目が見えにくくなることも混乱した行動の一因になり、その混乱は通常、耳が聞こえにくい場合よりも深刻になりがちだと述べています。
声が大きくなっている理由が「本人に聞こえていないから」であれば、叱っても意味がありません。むしろ、近づいて存在を知らせる、触れて安心させるといった対応のほうが効果があります。
高血圧が関わっている場合

ヒルズは、猫の高血圧について原因として一番多いのは腎臓病と甲状腺疾患であり、高血圧は結果的に脳にダメージを与え、認知症の徴候と同じような行動変化を引き起こしたり、既存の認知症を悪化させたりするおそれのある脳内変化につながることもあると説明しています。血圧測定はかかりつけの動物病院に相談するよう案内しています。
認知症(認知機能不全)の場合
アニコム損保の解説によれば、10歳を過ぎる頃から認知機能の低下が見られる猫が増えてきて、15歳以上では半数程度の猫に何らかの症状が見られるとされています。
診断の進め方は、他の病気の場合と異なります。行徳どうぶつ病院は、現在、猫の認知症を診断するための確立された検査方法はなく、血液検査や画像検査を通じて他の疾患が原因でないことを確認しながら診断を進めると説明しています。アニコム損保も、症状から認知症が疑われる場合は血液検査、レントゲン検査、超音波検査、心電図検査、血圧測定などで他の疾患を除外していくとしています。
つまり、認知症は「他が否定されて残る診断」です。検査を受けずに認知症と決めることはできません。
見分けるための観察ポイント
| 見るところ | 甲状腺機能亢進症 | 難聴・視力低下 | 認知症 |
|---|---|---|---|
| 食欲 | 増えることが多い | 変化なし | まちまち |
| 体重 | 減っていく | 変化なし | 変化なし〜減少 |
| 鳴くきっかけ | 落ち着きなく興奮している | 音や姿が分からないとき | きっかけがはっきりしない |
| 近づいたとき | 鳴き止まないことが多い | 気づくと落ち着くことがある | 反応が乏しいことがある |
| 他の変化 | 多飲多尿、攻撃的になる | 呼びかけへの反応が鈍い | 粗相、昼夜逆転 |
これは目安であり、複数が重なっていることも珍しくありません。実際の切り分けは検査で行います。
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自宅でできる対策
環境を変えない
見えにくさや聞こえにくさがある猫にとって、覚えている配置は移動の手がかりです。家具の位置を動かさない、通り道に物を置かない、といった配慮が転倒や混乱を減らします。段差の大きい場所には足がかりを用意し、滑る床にはマットを敷きます。
夜間に足元の明かりを残しておくと、暗い時間帯の不安が減ることがあります。目の白濁など見え方の変化が気になる場合は、日頃のケアもあわせて見直しておくと安心です。
声をかけ、日中に活動の時間をつくる
行徳どうぶつ病院は、猫の認知症について生活環境の整備や適切なケアによって進行を遅らせたり症状を軽減させたりすることが可能で、声をかけたり一緒に遊んだりすることで脳に刺激を与え、名前を呼んでコミュニケーションをとることや遊びを通じて脳を活性化させることが有効だとしています。同院は、適度な運動や日光浴を通じてセロトニンの分泌を促すことも情緒を安定させるうえで重要だと述べています。
記録をつける
鳴き始める時間帯、鳴き続ける長さ、止まるきっかけ、体重、飲水量。この5つを1〜2週間記録しておくと、受診時の判断材料になります。特に体重は、甲状腺機能亢進症を疑ううえで重要です。
痛みが背景にある場合、動きたがらない、触られるのを嫌がるといった変化を伴うことがあります。
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受診の目安
次のいずれかに当てはまる場合は、早めに相談してください。
- よく食べているのに体重が減ってきた
- 水を飲む量が明らかに増えた
- 数週間のうちに鳴き方が急に変わった
- 攻撃的になった、落ち着きがなくなった
- 呼びかけへの反応が鈍くなった
10歳を過ぎた猫では、症状が出ていなくても定期的な血液検査が早期発見につながります。
まとめ
老猫が叫ぶように鳴く背景には、甲状腺機能亢進症、聴力や視力の低下、高血圧、認知症といった複数の可能性があります。このうち甲状腺機能亢進症は血液検査で確認でき、内服や療法食で管理できる病気です。
認知症は他の病気を除外したうえで残る診断であり、検査を受けずに判断することはできません。まずは体重と飲水量の記録を持って動物病院へ。そのうえで、環境を変えない、日中に声をかける時間をつくるといった対応を続けていってください。

